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「SEにとって百年に一度のチャンスが来た」と「なれる ! SE」

2013年8月18日

SEにとって百年に一度のチャンスが来た」は、ITpro の6月21日の情報サービス産業協会(JISA)副会長横塚裕志氏へのインタービュー記事のタイトルだ。情報サービス産業協会(JISA)の副会長でSE一筋40年の人だけあって、SEに対する思い入れが強い。次のようにSEに檄を飛ばしている。

「日頃からシステムの開発に取り組んできたSEは論理的な思考力が鍛えられている。しかも、SEは研究、製造、営業、経理、人事といった様々な組織のシステムを開発し、運用してきたから、組織間の関連や全社の業務の流れを俯瞰できる」。

自分は、どちらかというとSE不要論の方なので、それとは全く正反対のこのを書いてあった記事なので頭の片隅に残っていた。

お盆休みに、「なれる ! SE」というライトノベルが結構人気になっているということで「なれる!SE (8) 案件防衛?ハンドブック」を読んでみた。作者の夏海公司氏は元SEということで、日本のIT業界の実情がかなりリアルに描かれている。今回読んだ巻のテーマは既存顧客案件の攻防というよくある案件でスリリングなこともあるので面白く読むことができた。

このライトノベルを読んでいて、頭をかすめたのが横塚氏の記事である。確かに日本のIT産業を牽引してきたのはSEだったということは間違いない。大手SIerを中心にITゼネコンと呼ばれる世界、すなわち、SEというプロジェクト管理能力、顧客折衝能力がある人間を中心にして、下請けのSEやPGを使ってシステムを作っていくという構造を作った功績は大きい。

一方世界では、こういう日本のIT企業とは全く別世界にあるIT企業も多い。例えば、37シグナルの創始者の2人が書いた「小さなチーム、大きな仕事 - 37シグナルズ成功の法則」では、小さなソフトウェア会社が成功するための一つの手法が書かれているが、全くビジネスモデルが違う。

僕たちはまだみずからに制約を課している。一度にサービスに携わる人間は、一人もしくは二人だけにしているのだ。そして、つねにサービスの機能は最小限にとどめている。このように自身に制約を課すことで、あいまいな形のサービスを生み出さないようにしているのだ。

あれがない、これがないと嘆く前に、今自分ができることは何なのかを考えてみよう。

こういうやり方ってシンプルだけど余分なものがないから非常に効率がいい。確かに大規模なシステム構築の案件ではSEは必要だと思う。でも、それ以外の場合に本当にSEという調整役の人間が必要なのかはもう少し考えた方がいいと思う。自分もWebサービスを作ったり運営したりしているけど、今はクラウドサービスや OSS のソフトウェアがあるから、一人で数百万ページビューぐらいのWebサービスを作成して運営するのは可能だと思っている。

日本は会社人間が多い国だと思っている人が多いが、実は下のグラフのように、もともとは自営業の多い国だったということだ。1980年代に日本が成功した裏には、多様な技術を持った自営業者がいたということを本当は忘れてはいけないことなのだ。

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平成23年度  年次経済財政報告

日本は、高度成長気に労働集約サービスを有効に活用して世界のナンバー2になった。その成功体験から、会社という組織で普通に優秀といわれている人を中心にして、コミュニケーション能力や協調性のある人間を多く集めて仕事をするのがベストだという意識が身についてしまったようだ。

でも、1人や2人でも Webサービスが作れる時代だし、他方では、中国やインドには日本のエンジニアの半分以下の給料で働くエンジニアがいるという時代だ。大きな組織をつくれば身軽さや柔軟さを失ってしまう。5人で2人分の仕事しかできなければ、会社としては長時間のサービス残業をさせるしか生き残る道はない。それが日本の多くのIT企業やWeb制作会社の実態だろう。高度成長期の成功体験を忘れて、どうしたらいいか自分の頭で考えてみることが必要なのではないかと思う。

日本からやっとシステム・エンジニア、プログラマーという職業がなくなった!

2013年8月3日

日本標準職業分類での話ですが、システム・エンジニア、プログラマーという職業がなくなっています。平成21年12月に改訂される以前の日本標準職業分類(平成12年12月改定)では、情報処理技術者は、061 システム・エンジニア、062 プログラマー の二つに分類されていました。その職業の説明は次のようになっていました。

システム・エンジニア

電子計算機による情報の整理・加工・蓄積・検索等に関する機械化された業務システムの分析・設計及びプログラムの設計についての技術的な仕事に従事するものをいう。

プログラマー

システム設計書に基づいて、各種プログラム及びコンピュータ処理に必要な操作手引書等を作成するものをいう。

この分類は、IBMが主導していたメインフレームの時代の産物です。日本では今でもシステム・エンジニア、プログラマーという職種に分けて仕事をいる会社も多いようですが、世界的にみれば一人で設計もプログラムもするのが常識です。

やっと平成21年12月に改訂されていて、情報処理・通信技術者は、以下のように分類されるようになっています(詳細は総務省政策統括官(統計基準担当)日本標準職業分類(平成21年12月統計基準設定))。

  • 101システムコンサルタント
  • 102 システム設計者
  • 103 情報処理プロジェクトマネージャ
  • 104 ソフトウェア作成者
  • 105 システム運用管理
  • 106 通信ネットワーク技術者
  • 109 その他の情報処理・通信技術者

そのうちシステム設計者とソフトウェア作成者について、説明と内容例示を抜粋すると以下のようになる。

システム設計者

顧客又は自己の問題の解決のため、ハードウェア、ソフトウェア双方を含め、主として必要なシステム全体の構成を企画する仕事に従事するものをいう。パッケージソフトウェアの開発企画、企業等でシステムの導入に関する企画や導入時の監督の仕事に従事するものも含まれる。ただし、個々のソフトウェアの開発の仕事に従事するものは小分類〔103〕に分類される。
○システムアーキテクト;システムアナリスト;情報処理アーキテクト;ISアーキテクト
×情報処理プロジェクトマネージャ〔103〕;プログラマー〔104〕

ソフトウェア作成者

ソフトウェア作成(基本ソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア双方の開発を含む。)のための仕様決定、設計及びプログラミングの仕事に従事するものをいう。ただし、主としてシステム全体の構成を企画する仕事に従事するものは小分類〔102〕に分類される。
○テクニカルスペシャリスト;プログラマー;ゲームプログラマー;CGプログラマー;社内システムエンジニア;クリエータ(情報通信産業に関するもの)
×システムアーキテクト〔102〕;情報処理プロジェクトマネージャ〔103〕

かなり国際標準に近くなっています。システム・エンジニアに配慮してか、システムアナリストという職種が確立できていないためかはわかりませんが、本来はシステムアナリストとすべきところをシステム設計者としている点はありますが、以前と比較すればかなり進歩しています。

厚生労働省編の職業分類の方も平成23年に改正されています。総務省と微妙に違っていて、ソフトウェア作成者をソフトウェア開発者を呼んでいます。(詳細はハローワークの労働省編職業分類

職業分類は改正されたものの、ハローワークインターネットサービスの求人をみても、こちらの職種名だと依然としてシステムエンジニア、プログラマーという名前が使われているし、平成24年賃金構造基本統計調査の結果もシステムエンジニア、プログラマーの分類で公表されています。参考までに、平成24年賃金構造基本統計調査の結果をメモしておきます。

システムエンジニア 281,250人 年収5,376,200円

プログラマー 110,450人 年収4,192,600円

なぜ、日本の職業分類がこのように変更されたかというと、国際標準職業分類(ISCO 参考)が2008年に改訂されたためということのようです。参考までにISCO-08での情報処理・通信技術者の分類は以下にメモしておきます。

  • 25 Information and communications technology professionals(情報通信技術専門職)
  • 251 Software and applications developers and analysts(ソフトウェア・アプリケーション開発者、アナリスト)
  • 2511 Systems analysts(システムアナリスト)
  • 2512 Software developers(ソフトウェア開発者)
  • 2513 Web and multimedia developers(ウェブ・マルチメディア開発者)
  • 2514 Applications programmers(アプリケーションプログラマー)
  • 2519 Software and applications developers and analysts not elsewhere classified(他に分類されないソフトウェア・アプリケーション開発者、アナリスト)
  • 252 Database and network professionals(データベース・ネットワークの専門職)
  • 以下略

ISCO-08の前のバージョンである ISCO-88 では、2131 COMPUTER SYSTEMS DESIGNERS AND ANALYSTS2132 COMPUTER PROGRAMMERS に分類されていて基本的には日本のシステム・エンジニアとプログラマーの分類と同じです。確かに 1988年当時は、コンピュータのコストが無茶苦茶高い時代でした。設計やプログラミングをコンピューターにアシストさせるということができなかったので、プログラム部分に人を大量に動員する必要があったので、設計とプログラムを分けるのは合理的な方法だったように思います。

ISCO-08 と 日本標準職業分類との違いを見てみると、日本では情報処理プロジェクトマネージャが入っていることです。ISCO-08では管理的職業従事者の 1330Information and communications technology service managers が該当すると思われます。

ソフトウェア・ディベロッパーはアメリカではベスト10に入る人気職種なのに、日本では「なくなる仕事」といわれる

2013年7月25日

CNNMoneyBEST JOBS IN AMERICA を見ていると、ソフトウェア・ディベロッパーが 9位に入っていることに気がついた。日本では、プログラマーやSEといえば、給料は安く、残業や休日出勤が当たり前の体力勝負の3K職場なので IT土方といわれているが、アメリカでは人気職種なのである。

最近の現代ビジネスの2020年「なくなる仕事」という記事では、プログラマーは「なくなる仕事」の3番目にあげられていて、次のように書かれている。

欧米では海外へのアウトソーシングが進んでいる。「システム開発の仕組みさえ構築されていれば、個々のプログラマーが日本にいる必要もなくなってくる」、「プログラミングそのものが機械化される」可能性も

こんなことを書く人たちが、生き残る会社はトヨタ自動車だといっている。トヨタ自動車が生き残るのであれば、実はプログラマーだって生き残れる。車はどんどん「プログラムの塊」になってきているからだ。自動車1台に搭載する電子制御ユニットの数が、100個以上にのぼる車両もあるそうだ。

欧米では海外へのアウトソーシングが進んでいるというが、アメリカで IT技術者がどうなっているかを、アメリカ労働局が作成している O*NET OnLine で調べてみた。要約すると以下のようになっている (http://www.onetonline.org/find/family?f=15&g=Go)。

  • 15-1121.00 - Computer Systems Analysts (544,000人、$79,680、20% to 28%)
  • 15-1122.00 - Information Security Analysts (302,000人、$86,170、20% to 28%)
  • 15-1131.00 - Computer Programmers (363,000人、$74,280、10% to 19%)
  • 15-1132.00 - Software Developers, Applications (521,000人、$90,060、20% to 28%)
  • 15-1133.00 - Software Developers, Systems Software (392,000人、$99,000、29% or higher)
  • 15-1134.00 - Web Developers (302,000人、$62,500、20% to 28%)
  • 15-1141.00 - Database Administrators (111,000人、$77,080、29% or higher)
  • 15-1142.00 - Network and Computer Systems Administrators (347,000人、$72,560、20% to 28%)
  • 15-1143.00 - Computer Network Architects (302,000人、$91,000、20% to 28%)
  • 15-1151.00 - Computer User Support Specialists (607,000、$46,420、10% to 19%)
  • 15-1199.00 - Computer Occupations, All Othe (210,000人、$81,140、3% to 9%)

括弧内の数字は、従業者数、年収、2010年から2020年への伸び率である。

このデータをみればわかるようにアメリカでは、コンピュータ・プログラマーでさえも、2010年から2020年に全職種の平均的な伸び率である10%から19%の伸びが期待されている。決してなくなる仕事ではないのである。

ソフトウェア・ディベロッパーは、プログラミングを中心に設計等ソフトウェア開発全般を行う職種であるが、年収は9万ドルを超えていて、人気職種であることがよくわかる。こちらの方は、今後就業者が高率で増加する職種となっている。

結局、アウトソーシングが進んでも、すべてをアウトソーシングできるわけではないのである。ましてプログラミングというのは技術の中核的な存在になってきているからプログラマーという職種は消えることはありえない。

それでは現代ビジネスの記事が全くの嘘かというと、日本がこれまで大量に育ててきたプログラマーの一部(一部といっても結構大量かも)が不要になってきているというのは事実である。そういう一部のプラグラマーのことで、すべてのプログラマーが不要だと読めるような記事にするのはどうかなと思う。

HTMLのテーブルに機能を追加する JavaScript Grid ライブラリーを調べてみた

2013年7月21日

Webサービスを開発していると、アプリケーションの中にはテーブルを多用する場合があります。現在作成中の「統計データ API エクスプローラ」は、その典型的な例です。それで、大量のデータを Excel のように便利に表示してくれる JavaScript ライブラリーを探してみました。

DataTables

この分野のライブラリーで、最も有名で、最も活発に活動しているのが、DataTables です。jQuery のプラグインで、HTML のテーブルにソート、スクロール、ヘッダー、フッター、編集等の機能を簡単に追加できるので便利なソフトです。使い易く機能が豊富なので、一般的な使い方では最もおすすめのライブラリーです。欠点といえばデータ量が多くなると重いことです。

jqGrid

DataTables についで有名なのが、jqGrid です。こちらも、jQueryのプラグインです。jqGrid は、DataTables ほどは親切ではありませんが、機能は豊富です。現在では、HTML Table も利用できるようになったり、サンプルも詳しくなっていますが、DataTables の方が使い易いのでどちらかというと開発者向けのライブラリーです。

SlickGrid

今回採用しようと思っているのは SlickGrid というライブラリです。機能は少ないし、データも JSON にする必要があるので、プログラマー向けのライブラリーです。しかし、大量のデータを処理できるライブラリーで、100万行のデータにも対応でき、APIも使えるということなので、今回のケースには最適だと思いました。現在テスト中ですがある程度使える目処がたちました。ライブラリーはいろいろありますが、有名なものを使うというだけでなく目的や用途に合わせて最適なものを選択することも必要だと思います。

少し話はそれますが、SlickGrid の作者である Michael Leibman 氏は、現在は Google 社のシニア・ソフトウェア・エンジニアです。Linkedin で調べると、SlickGrid は、Google 社に入社する前から作っていたそうです。欧米系IT企業では、有名なフリーソフトの作者は入社試験で圧倒的に有利だそうです。エンジニアtypeの記事「Twitterで働く日本人「開発現場はリアルなタイムラインのよう」」でも、twitterの非公式ライブラリを作っていて Twitter社に採用されたという日本人エンジニアが紹介されています。少し前に紹介した NLog の作者である Jaroslaw Kowalski 氏はMicrosoftのエンジニアです。このように就職に有利になるということも、世界的にはOSSのソフトウェアが盛んに作られている理由の一つだと思います。一方で日本のIT企業ではそういう話は全く聞かず、過酷な労働環境で「IT土方」になってしまっているのは非常に残念です。

エンジニアも休みを取ろう - Winny開発者・金子勇さんが死去

2013年7月8日

P2Pファイル共有ソフトWinnyを開発したことで有名な金子勇さんが7月6日急性心筋梗塞で死去したという報道がされている。金子さんは1970年7月生まれで42歳だった。心筋梗塞はかなりの割合で予防できる病気であるだけに残念なことだ。

年齢と死因をみて、気になったのは過労のことである。40歳頃から体力が低下するので、無理な生活をしているとこういう病気になることがよくある。

金子さんが創立した株式会社SKEEDのWebページのリーダー紹介では、金子さんについて以下のような紹介があった。

趣味は暇プロ。何かアイデアを思いつくと、プログラムという形で表現し、検証してきた。小さいころからプログラミングを趣味とし、数々のプログラムを作成して現在に至る。日常ではトラックボールを愛用し、キーボードを抱えたまま就寝、起きてまたキーボードに向かう。そのため電動式の起き上がりベッドを常用しているが、これは東急ハンズで買ったものであり、よく噂されているような介護用ベッドではない。

この記述をみると、金子さんの場合は、自らの意思で長時間プログラミングをしていたようだ。自分の意思でということで一般的な過労死とは違いがあるものの、長時間労働はやはり健康によくないと思う。エンジニアも休みを取って遊びに行くべきだろう。

自分も少しは余裕を持つのがいいだろうということで、今回は花の写真を添付しておく。

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